高齢化社会と言われて久しい日本ですが、国にとって問題となるのは、労働力が減少することによる
収入の減少と、社会保障制度による支出の増加です。
そこで、支出の増加を抑えるという観点から、国の保険料負担を軽減すべく、割安な後発医薬品
(ジェネリック医薬品)を推進しています。
もちろん、個人の医療費負担を軽減してもらうという目的もありますが…
この流れを受け、2024(令和6)年10月から、後発医薬品があるお薬で、患者が先発医薬品の処方を
希望する場合には、「特別の料金」の支払いが必要となります(選定療養)。
この「特別の料金」ですが、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を言います。
例えば、先発医薬品の価格が1錠100円、後発医薬品の価格が1錠60円の場合、差額40円の4分の1である
10円を、通常の1~3割の患者負担分とは別に支払うことになります。
ポイントは、「特別の料金」の支払いが必要となるのはあくまでも「患者希望」の場合であること、
「特別の料金」については保険が適用されない部分であるため、消費税の課税対象となることです。
なお、医療上の必要性により、「医師の判断」で先発医薬品を処方する場合には、上記の「特別の料金」は
発生しません。
また、クリニックや薬局が適格請求書発行事業者(インボイス登録済の事業者)に該当しない場合には、
「特別の料金」に係る消費税は発生しません。
上図は先ほどの具体例(先発医薬品が1錠100円、後発医薬品が1錠60円の場合)に基づいて、クリニックや
薬局が適格請求書発行事業者で、患者が3割負担の場合のイメージ図となります。
この図でも明らかですが、国側においては、先発医薬品の保険料負担が減少します。
患者側においては、先発医薬品を希望した場合、負担額が増加します。
また、金銭的な負担以外で、クリニックや薬局側においては、「特別の料金」部分について消費税法上
課税売上となるため、会計処理上は非課税売上と別建てで経理する必要があります。
同時に、医薬品の処方について非課税売上と課税売上との両方が発生するため、選定療養の対象となる
先発医薬品を仕入れた場合、課税売上割合等、消費税の取扱いに注意が必要となります。
このように、2024年10月以降、先発医薬品について、患者側においては「特別の料金」の負担、
クリニックや薬局側においても事務的な負担が増加する可能性があります。
患者側におかれましては、現在処方されている医薬品に対して再確認を、また、クリニックや薬局側に
おかれましては、経理処理にご注意いただくとともに、この改正についての周知徹底をお願いいたします。
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